火と水のふたご
にしな さん
水路が張り巡らされた街の片隅に、 鈴の音が聞こえる仕立て屋がある。 店を切り盛りするのは、金魚の双子姉妹。 姉のリウは炎を司る娘。 茜色の衣が琉金のように華やかで、人々の憧れを集める存在だ。 何気ない仕草ひとつで人々の心を惹きつけ、頬を赤くする者も少なくない。 妹のランは水を司る娘。 蘭鋳のようにころんとまるく愛らしい見た目とは裏腹に、とても器用な仕立て師だ。 姉のことが大好きで、誰かがリウを独り占めしようとすると、ついむくれてしまう。 二人が仕立てる衣装の材料は、庭に育つ不思議な硝子の鈴の実。 風が吹けば、ちりん、と澄んだ音を鳴らし、 雨の日には、幾つもの音色が重なり小さな合唱のよう。 リウしか摘み取れない鈴の実を糸車へ入れると、澄んだ鈴の音とともに殻がほどけていく。 リウの熱を受けた実はやわらかな光を帯びながら細く引き伸ばされ、 やがて硝子のように透き通った一本の糸へと姿を変える。 そしてランが冷たい水の力を宿した編み針で編み上げることで、 水中をたゆたう金魚の尾鰭のように軽やかに揺れる衣となるのだ。 その服には不思議な力が宿り、"いちばん好きな自分"になれる。 着れば少し勇気が出たり、お祭りの日がもっと楽しくなったり。 火と水。 触れれば消えてしまいそうな二つの力は、 なぜだか誰よりも息が合う。 これは、 鈴の実が揺れる水の街で、 金魚の双子姉妹が人々の願いを編みあわせていく、 あたたかで少し不思議な物語。 ---------------------------------------------------------------------- 一般的なファンタジーでは火と水は対立する属性として扱われることが多い印象ですが、 「相反するけど補い合う関係」をテーマに制作しました。 「火と水」というお題からガラス(金魚鉢)を連想しました。 火によって形を作り冷やし固められるため、相反する二つの力が共存しているところが 双子ちゃんに合いそうだなと思いました。 ガラス=冷たい・硬い、編み物=あたたかい・やわらかいで対比させています。 どこかノスタルジックな雰囲気を漂わせたかったので和風要素を少しだけ入れています。 夏祭りの金魚すくいや浴衣もイメージして柄の配色は大胆に。 炎がゆらめき水面がおだやかにたゆたう表現としてフリル多めのデザインにしました。